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【書評×持論】「10年後の仕事図鑑」を読んで考えた未来像

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10年後の仕事図鑑

落合陽一×堀江貴文

「10年後の仕事図鑑」(以下、本書)の大きなテーマのひとつに「掛け算」があります。

複数の仕事、経歴を掛け合わせる事でレアな存在になれる、と本書では繰り返し主張されます。

まず、この本からして「落合陽一」という大学で研究者として働きながら、経営やメディア運営もこなす人と「堀江貴文」というもはや肩書きがありすぎて何をやっているかよくわからない人の「掛け算」でできています。

よくある対談形式の本かと思いきや、お互いが自分の思っている事をひたすら語るという形式になっています。

不思議なことに、二人して好き勝手に話している割には、方向性がバラバラになる事はなく、「あれ、今どっちの話だっけ?」と思うことがありました。

かつては、ひとつの事を極めるというのが、「かっこいい」という価値観でしたが、インターネットでいろんなものにアクセスできるのに、その生き方ってもったいなくね?と主張するふたり。

まあ、ちょっと「ビジョンビジョン」していて、具体性がないのが玉にキズですが、本人たちは「具体性なんて人雇って考えさせればよくね?」くらいに考えているのかもしれません。

落合陽一という人

「ホリエモン」こと堀江貴文氏を知らない人はいないでしょうが、落合陽一って誰?という方もいると思うので、彼について軽く紹介しておきます。

落合陽一氏は、筑波大学で研究者として働いていますが、メディアにも多く露出しており、本業がなんなのかよく分かりません。

六本木育ちで、開成高校出身というサラブレッド感溢れる生い立ちを持っていますが、東大受験には失敗してしまったようです。

この辺の挫折というか歪みが、現在の旺盛な行動力の源なのではないかと私は思います。

ある意味、東大受験に成功していたら今の「落合陽一」ではなく、官僚とかになって一本のレールの上を歩く人生になっていたのかもしれません。

「ワイドなショー」で有名な、古市憲寿氏のように、メディア受けするルックスで現代の常識をズバズバ切って行く系の一人ですね。

「10年後の仕事図鑑」は全然図鑑ではない

「図鑑」というと、必要な情報がまとまっているものをイメージしますよね。

本書は「図鑑」を期待して買うと間違ったものを買った気分になります。

本書は、たしかに未来っぽい仕事はたくさん紹介されてはいるのですが、それらが読了後にあまり頭に残らない作りになっているんですね。

それは、「メッセージ性」が強すぎるからだと思われます。

知り尽くされたものを丁寧に記述していく収集家の要素は全くなく、完全なるアジテーター(扇動者)が書いた文章になっています。

すなわち、「図鑑」というクローズドな、完結したものにつけられる名前をつけておきながら、伝えているメッセージは「新しいことをやって、唯一無二の存在になろう」とか「既存のレールに縛られるな」といったオープンな内容なのです。

「なんか適当で無責任な事を言ってるな」と感じる人もいるでしょうし、「自分も新しい事をやってみたい!」と思う人もいるでしょう。

この本を買う人のメンタリティは、大きく分けて以下の2つが予想されます。

・「未来」に自分の仕事がなくなっていないか不安、AIが人間の能力を超えて、今までの自分の人生が否定されてしまうのではないかという恐怖から逃れて安心するために本書を否定する。

・「現状の日本社会」に対する不満、行動できない自分に対する苛立ちを解消するため、または自分より成功している人たちの仕事がAIによって否定されて欲しいがために、本書を肯定する。

いずれにしても、本書は「ゼロベース」で、構わないんだからチャレンジしようぜ!という論調なのでとっつきやすいと思います。

前者の人は不安を解消するために、後者の人は憤りを昇華するために、「ピュアな好き」を大切に、新しい事にハマってみよう!と主張するのが本書です。

「10年後」なんてぶっちゃけわからねえよ!

「不安」なのはヒマだから。堀江貴文氏の主張

10年後の仕事図鑑というネーミングは、購買意欲を掻き立てるための戦略なのでしょう。

「ホリエモン」は「1年後だって分からないのに、10年後の心配してどうするの?ヒマなの?バカなの?」と煽ってきます。(ちなみにバカとは言ってません。私の意訳です。笑)

「ホリエモン」は主張がストレートで、グサグサくるため、苦手な方も多いでしょう。

しかし、率直であるがゆえに、我々の心を揺さぶるパワーがあります。

「ホリエモン」のいいところは、切り捨てるだけでなく、「こうしたらいいんじゃないの?」と一応の道筋を教えてくれるところでしょう。

彼の言うことはある意味最もらしすぎて、誰も口に出来ない事だったりしますね。

「仕事」と「遊び」の境界がなくなるほど、何かにハマってしまえば不安なんかない!とホリエモンは言っています。

polcaおじさんを探せ!

クラウドファンディング、フレンドファンディングが有名になってきた昨今ですが、たしかにインターネットのおかげで、「お金」がカジュアルになったな、と感じますね。

私が子供の頃は、よく「金払ってるんだから」とか「お金を稼ぐのは大変なこと」という言葉を耳にしました。

お金はある意味神聖なもので、ふざけてやり取りするものではない、と教わって育った記憶があります。

しかし、現在では「クラウドファンディング」で数百万単位のお金がやりとりされています。

当時の見返りは、「最初のイベントに参加する権利」だったり、物質的な価値を持たないものまであります。

でも、割とみんな気軽に投資しています。表向きは、お金を貰うのは大変!と言いながら、インターネットなどの顔が見えないツールを持たせると、案外ポンっとお金を出してくれる人はいるみたいです。

「polcaおじさん」とは、お金が余っていて、面白い事にお金を出したがる人の事です。

身近な人を考えると、そんな人いないんじゃない?と思うのですが、インターネットで全世界を検索すれば、物好きな人は案外いるみたいです。

インターネットが世界を小さくした

会社の役割が減る未来

会社は様々な機能を複合して持っていますが、インターネットの発展により、会社機能の一部から個人へと移りつつあるようです。

会社の機能として重要なものが、「集金」機能です。

商品を売ってお金を回収するだけでなく、

会社という看板に信用をあつめて、銀行からお金を借りる事ができます。

集金するにしても、お金のやり取りをするシステムを維持する費用だったり、経理部の人件費だったりがコストになりますが、インターネットのサービスを使う事で、それらの機能を外部委託できます。

つまり、組織の「集金」機能を個人で持てるような時代になったわけです。

財布も物理的な財布から、スマートフォンに置き換わりつつあります。

いままで、組織を作らないとできなかった事が個人で、あるいは小規模な組織で実現可能になりました。

庶民が影響力を獲得し、庶民の「有名人」化が進む未来

昔は人に会ったり、話を聞いたりするのも一苦労でした。

しかし、インターネットがあらゆるものをカジュアルにしたおかげで、庶民の我々も有名人に簡単にアクセスが可能になりました。

また、YouTuberやブロガーなど庶民が庶民の支持を集めて、影響力を持つようになりました。

そもそも、「有名人」を自分たちで作るようになりました。

よって、組織的な影響力を使って商品を宣伝する事も、個人がある程度代替できるようになって来ました。

「信用」や「権威」がそれだけ分散されて来たのです。

「ホリエモン」はよく、会社なんていらなくなる!と発言しています。

いらなくなる、というのは極論というかポジショントークなのでしょうが、会社じゃないと出来なかった事が少ない人の集まり、ゆるい集まりで代替されて行く未来は想像できますね。

10年後の仕事図鑑を読んで考えたこと

「会社」という単位ではなく、「プロジェクト」単位で社会を動かす

私も含めて、就活生を見ていると、「資産運用」をしたいから証券会社を希望します、のようなそもそも「会社に入らないと社会的な活動ができない」と考えてしまっている人が多いように感じます。

法律でガチガチに規定されている分野に個人で介入するのは、まだ難しいかもしれませんが、それでも「資産運用」ならば、お金持ちに気に入られて個人的なアドバイザーになるという手段もあるわけです。

(法律的にどうなってるか詳しくないので、実現可能かは今は考えていません。)

私が言いたいのは、プロジェクトベースで物事を動かしていける下地が固まりつつあるのではないか、という事です。

例えば、漫画の編集者になりたい、という目的があるとします。

出版社に就職するのではなく、「絵が描ける人」と「ストーリーを考える人」を集めて来て(仲良くなって、あるいは対価としてお金を払って)、漫画にします。

それをインターネットで「電子書籍」として発表すれば、立派な編集者になっているわけです。

「note」などのサービスを始め、販路も確保されていますし、広告だって個人で出せます。また、Twitterで拡散するという手もあれば、インフルエンサーに依頼する事もできます。

会社に入った方が「安定」はしていますが、目的を達成したいならプロジェクトベースで今すぐ始める事が出来ます。

さらに、在庫を持たない仕組みを考えればリスクも少なく、また人を雇う必要もないので、利益率も高くなります。

私は、今ブログをベースに活動していますが、プロジェクト単位でやりたい事はたくさんあります。

「機械学習を使って、生まれる前の卵でオスメスを判定するシステムを作る」

「ワードプレスで集客に向いているテーマを作り、自動で最適なタイトルを考えるような機能を持たせる」

「プロジェクト単位でデザイナーとプログラマーが活動出来るようなグループプラットフォームを作る」

など、挙げればキリがありません。

仕事面でやりたい事もたくさんあるのですが、プライベート面でも「場所に依存しない生活を実践して、それを社会に広める」ということをやりたいと思っています。

「翻訳AI」が生まれると、さらにスモールワールドになる

日本の人口は減っていますが、世界の人口は増えています。

マーケットは拡大しているわけです。

もし、今書いているこの文章が、世界の各言語に「自動で」翻訳されたらすごくないですか?

読者の母数が一気に拡大しますし、友達の人種や売れるもの、買うもの、すべてが混ざり合って大きく変化すると思います。

しかも、翻訳なら近い将来実現されそうですよね?

チャンスを逃さないようにしたいものです。