
攻殻機動隊の漫画のレビューを書いたので、ついでに押井守監督の他の作品(監督は違う人で、原作と脚本みたいです)についても触れていきたいと思います。
他にも「パトレイバー」や「うる星やつら」など有名どころはありますが、私はどっちも見てないんですよね(笑)
私が今回おすすめするのは、こちらの「人狼」
攻殻機動隊のサイバーな雰囲気はほとんどありません。戦後間もない日本を舞台にしているので、アナログな雰囲気ですね。
とても思い入れのある作品です。
JIN-ROH
自衛隊や警察とは別に、「特機隊」という舞台が組織されている東京を舞台に、「セクト」と呼ばれる反政府ゲリラ組織と「特機隊」を中心に物語が展開します。
この映画のすごいところは、「雰囲気」で観客を魅了するところだと思います。ノスタルジックな昭和の雰囲気がいい!
最初の暴動の場面から、上空のヘリコプターに視点が飛ぶ時の雰囲気で、見入ってしまいますね。
ストーリーそのものも面白いと思うのですが、特機隊の訓練風景の中で、うまく人の中に入っていけない主人公の「伏一貴」に感情移入してしまいました。
「伏一貴」は優秀ですが、かつての同期「辺見」によれば、情緒面に難ありとのことです。
舞台に配属されたばかりの伏は、ゲリラの自爆を阻止できなかった。
その弱点を突かれて、物語の最終局面へと突入していくわけですが、特機隊のメンバーはさらにその裏をかいていました。
公安は、特機隊のミスを足がかりに、首都警を押しのけて権力を拡大しようと目論見ます。
公安が伏をターゲットに選んだのは、おそらく、室戸が首都警の本部に来ていた時に、ランニングしている伏を見下ろしながらサングラスをかけるシーンだと思いますが、いつから特機隊の「人狼」側はその目論見に気づいたのでしょうか。
強化服と重火器に身を包んだ特機隊

特機隊と伏について補足しておきます。
特機隊は上の画像にあるような「プロテクトギア」を装着した兵士により組織されています。
すごく不気味な雰囲気ですが、ちゃんと中には人間が入っています。(なぜか投稿を呼びかける声も機械音というか、不気味)
セクトの制圧に失敗し、査問委員会で、養成学校での再訓練を命じられる伏。
養成学校での会話や生活の描写を見ると、プロテクトギアを纏った時の威圧感はなくなり、まあ普通の人間なわけです。
ただ、伏はちょっと変わったタイプ(群れから逸れた一匹狼っぽい)です。表情に乏しく、社会に馴染めないような雰囲気を漂わせています。
狼というか、犬っぽい無表情さ(犬なんで当たり前ですが(笑))
ただ、純粋で真っ直ぐなところがあります。
彼は、爆死したセクトの女(阿川)の情報を、辺見から入手します。
そして、名前が整然と並ぶ墓地で、阿川の姉を偽って伏に近づいて来た雨宮と出会います。
人と関わりを持った獣の物語には、必ず不幸な結末が訪れる。
特機隊内の秘密組織「人狼」の戦略
特機隊内には、半田が組織した「人狼」があり、伏はその一員でした。
公安部は、テロリストとしての前歴がある雨宮と、現役の特機隊員とのスキャンダルを取ろうと雨宮を送り込んで来ました。
半田はそのことに気が付いて、証拠の写真を伏部屋に残します。
なので、「人狼」は、手を打って来た公安の包囲網を突破し、雨宮を確保することで、公安を追求しようとします。
伏は、半田とは少し違う考えを持っていたようです。やっと居場所を見つけたと言いながらも、完全に組織に溶け込む事はできず、雨宮を助けようと考えてます。
ただ、完全に組織から抜け出すということも出来ませんでした。「どこか別のところへ行こう」という雨宮の提案に乗る事はありませんでした。
おそらく、この時点で雨宮は死を覚悟していたと思います。
自分で選んでいるようで、実は流されている
確保した雨宮の鞄には、発信機がつけられていて、辺見の部隊が後を追って来ます。
「人狼」はそのことを見越した上で、伏にプロテクトギアを着せ、戦わせることにしたのです。
伏の行動は、自分で選んでいるように見えても、実は「組織」の戦略に縛られています。
雨宮を助けるならば、たとえ死ぬことになったとしても、デパートの屋上から二人で逃げ出すべきだったのかもしれません。
伏には、組織を裏切る事は出来なかったようです。
ただ、最後のシーンの表情を見る限り、雨宮を殺すことになるとは思っていなかったようですね。
群れを離れて、人の元へ行きたくなったか。